タイトル | 『感情の武器商人』 | ||||
タグ | *短編 *魔法使い | ||||
コメント | 昔々、世界の端っこに灰の国と呼ばれる場所があった。 そこではすべてが褪せていた。花は咲かず、空は曇り、誰も笑わない。 けれど、その中心にひとりだけ、色を持つ者がいた。魔法使いだった。 彼は色を作れた。火の赤、海の青、命の緑。彼が振るう魔法は、世界に一瞬だけ“美しさ”を思い出させた。 でもね、彼の魔法には代償があった。 「誰かの記憶を燃料に、世界に色を灯す」 だから彼は自分の記憶を一つずつ使った。家族の顔。名前。笑い声。 次に、友の声。恋した少女の瞳。初めて見た空の色。 魔法は見事だったよ。花は咲き、空は澄み、人々は「ありがとう」と笑った。 でも魔法使いはもう、誰のために魔法を使っていたのか思い出せなかった。 最後に彼が使った魔法は、「この国に春を」という願い。 その代わりに、彼は自分の名前を失った。もう誰にも呼ばれない、ただの影になった。 そして今でも、灰の国には春がある。 |
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iコード | i967079 | 掲載日 | 2025年 05月 22日 (木) 11時 50分 03秒 | ||
ジャンル | イラスト | 形式 | PNG | 画像サイズ | 819×1229 |
ファイルサイズ | 2,227,574 byte |
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